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ブログ| セルフクリンチングファスナーの「セルジャパン」

記事公開日

筐体設計で活用するバーリング加工とは?板厚・ねじ締結・強度設計のポイントを解説

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制御盤やサーバーラック、産業機器などの筐体設計では、軽量化や省スペース化に加え、組立工数の削減や十分な締結強度の確保が求められます。 特に薄い金属板にねじ穴を設ける場合、「板厚が薄く、ねじ山を十分に確保できない」「ナットを追加すると部品点数や組立工数が増える」といった課題が発生します。 こうした課題を解決する方法の一つが、バーリング加工です。 バーリング加工は、板金に開けた穴の周囲を立ち上げることで、ねじ山を形成するための長さを確保しやすくする加工技術です。適切に活用すれば、追加部品の削減や組立工程の効率化、筐体内部の省スペース化につながります。 一方、バーリング加工は、材料や板厚、ねじサイズなどによって適用条件が異なります。設計段階で加工の特徴と制約を把握し、用途に合った締結方法を選定することが重要です。 本記事では、バーリング加工の基本的な仕組みから、筐体設計での活用例、他のねじ締結方法との違い、設計時の注意点まで詳しく解説します。

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バーリング加工とは?

バーリング加工とは、金属板に設けた穴の周囲を塑性変形させ、円筒状に立ち上げる加工方法です。立ち上がった部分にタップ加工を施すことで、ねじ山を形成するための長さを確保しやすくなります。

例えば、板厚1.0mmの金属板にねじ穴を設ける場合、母材の板厚だけでは十分なねじ山のかかり長さを確保できないことがあります。

そこで、穴の周囲を立ち上げるバーリング加工を施すことで、母材の板厚を超える高さのねじ締結部を形成できます。

ただし、立ち上がり高さと有効なねじ山のかかり長さは同じではありません。実際に確保できるねじ山の長さは、加工形状やタップ加工の条件によって異なります。

バーリング加工の仕組み

バーリング加工は、一般的に次のような工程で行います。

  1. 下穴加工: 金属板に所定の穴を開けます。
  2. 立ち上げ加工: パンチとダイなどを用いて、穴の周囲を円筒状に成形します。
  3. タップ加工: 必要に応じて、立ち上がり部にねじ山を形成します。
  4. 品質確認: 立ち上がり高さ、割れ、寸法、ねじ精度などを確認します。

加工方法や金型の構造によっては、穴開けと立ち上げを連続して行うこともあります。

バーリング加工の大きな特徴は、材料を削り取るのではなく、材料そのものを変形させて形状を作る点です。そのため、切削による切粉の発生を抑えながら、薄板にねじ締結部を設けることができます。

一方、穴の周囲を引き伸ばすため、材料の延性や板厚、穴径などによっては割れや変形が発生する可能性があります。必要な立ち上がり高さを確保できるか、事前に確認することが重要です。

筐体設計でバーリング加工が活用される理由

1. 薄板筐体でもねじ締結部を確保しやすい

制御盤や通信機器、産業機器の筐体では、軽量化や材料費の削減を目的として、板厚を抑えた設計が採用されることがあります。

しかし、板厚を薄くすると、直接タップ加工を行った場合にねじ山のかかり長さが不足し、締結強度や耐久性が課題となる場合があります。

バーリング加工では、穴の周囲に立ち上がりを設けることで、ねじ山を形成するための長さを増やせます。

その結果、板厚を抑えながらねじ締結部を確保できる可能性があり、筐体の軽量化や構造設計の自由度向上に役立ちます。

ただし、締結強度はねじ山の長さだけで決まるわけではありません。材質や締付けトルク、ねじのサイズ、繰り返し使用の有無などを含めた検討が必要です。

2. 部品点数と組立工数の削減につながる

薄板にねじ締結部を設ける方法として、ナットやスペーサーなどの追加部品を使用する方法があります。

こうした構造では、部品の調達に加え、位置合わせや組付けといった作業が必要になります。

バーリング加工によって母材側にねじ穴を形成できれば、条件によっては追加部品を省略できます。

部品点数が減ることで、組立工程の簡素化だけでなく、部品管理や在庫管理の負担軽減にもつながります。

ただし、バーリング加工用の金型費用や加工工程の追加も考慮する必要があります。追加部品を削減できる効果と、加工に必要な費用を比較して判断しましょう。

3. 筐体内部の省スペース化に貢献する

筐体設計では、内部に基板や電源ユニット、配線、冷却部品などを配置するため、限られた空間を有効活用する必要があります。

ナットやスペーサーなどの部品を使用する構造では、周辺部品との干渉を避けるためのスペースが必要になる場合があります。

バーリング加工によって締結部を母材側に設けることができれば、こうした追加部品のためのスペースを削減できる可能性があります。

特に、薄型化や小型化が求められる電子機器や通信機器の筐体では、締結構造を含めた設計の見直しが有効です。

4. 溶接を伴わない締結構造を検討できる

ねじ締結部や接続部の構造によっては、溶接による部品固定が必要になることがあります。

しかし、溶接には設備や作業工程が必要となり、熱による変形や仕上げ作業への対応も求められます。

バーリング加工を利用してねじ締結部を設ける場合、溶接を使用せずに組み立てられる構造を検討できます。

ただし、バーリング加工自体が、すべての溶接接合を代替できるわけではありません。荷重や気密性などの要求仕様を確認し、適用可能な範囲を判断することが大切です。

バーリング加工の主な用途

バーリング加工は、薄板にねじ締結部や立ち上がり形状を設けたい場合に活用されます。筐体設計では、次のような部品が代表的な検討対象となります。

1. 制御盤・配電盤の筐体

制御盤や配電盤では、扉、カバー、取付ブラケット、内部の補強部品など、多くの部品をねじで固定します。

薄板に直接ねじ穴を設ける場合、締結部の強度や繰り返し開閉への耐久性が課題となることがあります。

バーリング加工を活用すれば、ねじ山のかかり長さを確保しやすくなり、構造に応じて締結方法の選択肢を広げられます。

2. サーバーラック・通信機器の筐体

サーバーラックや通信機器では、機器の高密度化に伴い、内部スペースの有効活用が重要になります。

取付金具や補助部品を固定する際、締結部の構造を工夫することで、追加部品の削減や組立性の改善を検討できます。

ただし、重量のある機器を支持する箇所や振動が加わる箇所では、締結部の強度と耐久性を十分に評価する必要があります。

3. 産業機器・装置カバー

産業機器の外装カバーや点検用パネルでは、保守作業のためにねじを繰り返し取り外す場合があります。

このような用途では、初期の締結強度だけでなく、ねじの着脱を繰り返した後のねじ山の状態も重要です。

バーリング加工が適しているかどうかは、開閉頻度、締付け条件、要求寿命などを踏まえて判断します。繰り返し締結への対応が難しい場合は、クリンチングファスナーなどの採用も検討対象になります。

バーリング加工と他のねじ締結方法の違い

筐体にねじ締結部を設ける方法には、バーリング加工のほか、直接タップ加工やクリンチングファスナーの圧入などがあります。

設計では、それぞれの特徴を理解し、板厚や要求強度、生産数量などに合わせて選定することが重要です。

比較項目

バーリング+タップ

直接タップ

クリンチングファスナー

ねじ部の形成

立ち上がり部に形成

母材に直接形成

ファスナーに形成済み

薄板への対応

立ち上がりでかかり長さを確保しやすい

板厚の制約を受けやすい

薄板用製品を選定可能

追加部品

条件により省略可能

原則不要

ファスナーが必要

主な検討事項

成形性、立ち上がり高さ、ねじ強度

板厚、ねじ山のかかり長さ

板厚、材質、圧入条件、保持力

繰り返し締結

用途に応じた評価が必要

ねじ山の耐久性に依存

製品仕様と使用条件に応じて評価

初期費用

金型や加工条件による

比較的簡素な構成が可能

ファスナー費用や圧入設備などによる

適した用途

立ち上がり形状を活用できる締結部

板厚や強度に余裕のある箇所

安定したねじ部や部品固定が必要な箇所

※クリンチングファスナーには複数の種類があり、適用板厚や性能は製品仕様によって異なります。表は一般的な傾向を示したものであり、個別の製品条件によって適否は変わります。

どの締結方法を選ぶべきか?

バーリング加工が適しているケース

  • 立ち上がり形状を設けるスペースがある
  • 追加部品を削減したい
  • 母材にねじ締結部を設けたい
  • 材料の成形性や必要なねじ強度を確保できる

直接タップ加工が適しているケース

  • 板厚に対して十分なねじ山のかかり長さを確保できる
  • 構造を簡素にしたい
  • 立ち上がり形状を設ける必要がない

クリンチングファスナーが適しているケース

  • 薄板に安定したねじ締結部を設けたい
  • 専用ファスナーによる締結構造が適している
  • 圧入条件や保持性能を含めて設計したい
  • 溶接ナットなどの別部品による締結方法を見直したい

重要なのは、どの方法が一律に優れているかではなく、強度・耐久性・コスト・生産性のバランスを考えて選定することです。

バーリング加工の設計ポイントと注意点

バーリング加工を採用する場合、設計段階で確認しておきたいポイントがあります。加工後の不具合や量産時の品質ばらつきを抑えるためにも、次の項目を確認しましょう。

1. 材質と板厚から成形性を確認する

バーリング加工では、穴の周囲の材料を引き伸ばして立ち上がりを形成します。そのため、材料の延性や板厚、穴径、立ち上がり高さなどが成形性に影響します。

材料の延性が不足していたり、加工条件が適切でなかったりすると、立ち上がり部に割れや亀裂が発生する可能性があります。

アルミニウムやステンレスなども、材質の種類や調質、板厚、加工形状によって適用可否が変わります。材料名だけで判断せず、実際の加工条件で確認することが重要です。

2. ねじ山のかかり長さと締付け条件を確認する

バーリング加工の目的の一つは、ねじ山を形成するための長さを確保することです。

ただし、立ち上がり高さが大きいほど必ず締結強度が高くなるわけではありません。タップ加工後の有効ねじ長さや、ねじ山の形状、材料の強度なども影響します。

また、締付けトルクが過大な場合、ねじ山の破損や立ち上がり部の変形につながるおそれがあります。

要求される締結性能に応じて、ねじ精度や締付けトルク、必要に応じて引抜き強度などを確認しましょう。

3. 穴径と立ち上がり形状を検討する

バーリング加工では、下穴径や立ち上がり高さ、フランジ形状などの組み合わせが重要です。

立ち上がりを高くする設計では、材料の伸びが大きくなり、割れなどのリスクが増す場合があります。また、穴の周囲に十分な材料が確保されていない場合、成形時の変形や周辺部への影響が生じる可能性があります。

必要なねじサイズだけでなく、加工後の形状や周辺部品との位置関係を含めて設計することが大切です。

4. 周辺部品との干渉や表面処理への影響を考慮する

筐体設計では、ねじ締結部単体の性能だけでなく、基板、配線、ブラケット、カバーなどとの干渉も考慮する必要があります。

バーリング部の立ち上がり方向や高さによっては、内部部品の配置に影響することがあります。

さらに、塗装やめっきなどの表面処理を行う場合は、加工部の処理状態や寸法変化についても確認が必要です。

設計段階で加工業者と形状や公差、表面処理の条件を共有しておくことで、試作後の設計変更を抑えやすくなります。

5. 生産数量と金型費用を含めてコストを比較する

バーリング加工では、専用金型を使用する場合があります。量産では加工工程の効率化が期待できる一方、少量生産では金型費用がコスト面で課題になることもあります。

また、バーリング加工後にタップ加工や検査が必要な場合、その工程費用も考慮しなければなりません。

比較する際は、金型費用だけでなく、材料費、追加部品費、加工時間、組立工数、不良率などを含めた総コストで評価することが重要です。

バーリング加工の採用前に確認したい評価項目

バーリング加工の採用にあたっては、試作や評価を通じて、設計上の要求を満たせるか確認することが重要です。

評価項目

確認する内容

主な確認方法

成形性

立ち上がり部の割れ、亀裂、変形

外観確認、必要に応じた断面観察

寸法精度

穴径、立ち上がり高さ、形状

寸法測定

ねじ品質

ねじ精度、ねじ山の欠損

ねじゲージなどによる確認

締結強度

ねじ山の破損、引抜きへの抵抗

締付け試験、引抜き試験など

耐久性

繰り返し締結後のねじ部の状態

着脱試験

生産性

加工時間、工程数、組立時間

工程比較

品質安定性

加工寸法や強度のばらつき

複数サンプルの測定・評価

必要な試験は、製品の用途や要求仕様によって異なります。

例えば、頻繁にカバーを開閉する筐体では繰り返し締結試験が重要になります。一方、重量のある部品を支持する箇所では、引抜きや変形に対する強度の確認が重要です。

振動を受ける装置では、締結部の緩みや変形についても確認する必要があります。

数値で比較すると設計判断がしやすくなる

締結方法を比較する際は、感覚的な判断だけでなく、実際の評価結果を数値で整理すると有効です。

例えば、同じ材料・板厚・ねじサイズを用いて、次の項目を比較できます。

  • ねじ部の有効かかり長さ(mm)
  • 引抜き試験の最大荷重(N)
  • 締付け時の破損や空転が発生するトルク(N・m)
  • 1個当たりの加工・組立時間(秒)
  • 1個当たりの総コスト(円)

ただし、比較する際は試験条件をそろえる必要があります。また、測定値は材料、形状、加工条件、試験方法によって変わるため、根拠のない一般値を適用することは避けましょう。

バーリング加工だけで要求性能を満たすことが難しい場合には、クリンチングファスナーなどの別の締結方法も含めて検討することが有効です。

バーリング加工に関するよくある質問

Q1. バーリング加工は薄い板金にも適用できますか?

薄板にねじ締結部を設ける方法として活用できます。ただし、適用できる板厚は材料、ねじサイズ、立ち上がり形状、加工条件などによって異なります。具体的な仕様をもとに、成形性と締結強度を確認する必要があります。

Q2. バーリング加工をすれば、必ずねじ締結強度が向上しますか?

必ずしもそうとは限りません。立ち上がりによってねじ山のかかり長さを増やせる一方、材料や形状によってはねじ山の破損や立ち上がり部の変形が生じる可能性があります。要求性能に応じた試験や評価が必要です。

Q3. バーリング加工とクリンチングファスナーは、どちらが適していますか?

必要なねじ締結強度、板厚、繰り返し締結の有無、部品点数、加工費などによって異なります。母材にねじ締結部を設けることが適している場合はバーリング加工が候補となり、薄板に専用のねじ締結部品を固定したい場合はクリンチングファスナーが候補となります。製品の仕様に合わせて比較検討しましょう。

Q4. バーリング加工のコストメリットは、どのように判断すればよいですか?

金型費用や加工費だけでなく、追加部品費、組立工数、検査費用、不良率などを含めて比較することが重要です。生産数量によっても費用対効果が変わるため、想定生産数量を踏まえて評価しましょう。

まとめ

バーリング加工は、金属板の穴周辺を立ち上げることで、薄板筐体のねじ締結部を確保しやすくする加工技術です。

適切に活用することで、次のような効果が期待できます。

  • ねじ山のかかり長さを確保しやすくなる
  • 追加部品の削減や組立工程の簡素化につながる
  • 筐体内部の省スペース化に貢献する
  • 構造や生産数量に応じて製造コストを見直せる

一方、材質や板厚、ねじサイズ、立ち上がり形状によって成形性や締結強度が変わるため、設計段階での検討と評価が欠かせません。

また、バーリング加工だけでなく、直接タップ加工やクリンチングファスナーなどの選択肢を比較することで、製品に適した締結構造を検討しやすくなります。

セルジャパン株式会社では、クリンチングファスナーを活用した締結方法についても、用途や板金仕様に応じた検討が可能です。

薄板筐体のねじ締結、部品点数の削減、組立工程の見直しなどでお困りの際は、バーリング加工とクリンチングファスナーの両面から最適な方法を検討してみてはいかがでしょうか。

[監修者プロフィール]
吉岡 正人(Yoshioka Masato)
営業担当課長
製造現場でも担当課長として長年加工に携わる。自身の加工経験とその後の営業経験からユーザーの声を聴き、自社の製品や工法で課題解決策を提案する。

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